3歳児神話には科学的根拠のないことが明らかに
国立大学法人東北大学と同大のエコチル調査宮城ユニットセンターは12月9日、「保育施設の早期利用は子どもの発達を促進する~3歳児神話に科学的な根拠はない」とするプレスリリースを発表しました。
今回の調査研究は、東北大学大学院医学系研究科発達環境医学分野の大学院生金森啓太医師と大田千晴教授らの研究チームが行ったもので、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の参加者のうち、約4万人のデータから保育施設利用と子どもの発達について解析したものです。
プレスリリースによると、エコチル調査と呼ばれる長期間にわたる大規模調査のデータを解析したところ、1 歳未満から保育施設を利用していた子どもは、3 歳まで保育施設を利用しなかった子どもに比べて、「コミュニケーション」「座る・立つ・歩くなど身体全体を使った粗大運動」「積み木や絵など手指を使った微細運動」「問題解決能力」「個人社会スキル」という5つの領域で3歳時点での発達が良いことが分かりました。特に、コミュニケーションと個人社会スキルにおいて、保育施設の利用と非利用で発達の差が目立ったということです。
また、同リリースでは、「本研究により早期の保育施設利用に対するポジティブな効果が示されたことで、科学的な根拠に欠けるネガティブな印象が払拭されることが期待される」と述べ、改めて3歳児神話に科学的な根拠がないことを説いています。
ただ、同リリースは、「保育施設と家庭での子育ての双方にそれぞれメリットがあるのは言うまでもなく、今回の結果が、保育施設を利用しない家庭での子育てを否定するものではない」ことも強調しています。
なお、今回の調査研究からは、保育施設を利用することで同年齢・異年齢の子どもや保育者といった他者との交流や遊びを通しての多様な経験が得られることの重要性も浮かび上がってきます。関係性の貧困や経験の貧困が言われる昨今、改めて家庭や地域社会という子ども環境の問題と、そこに関わる保育や子育て支援の在り方が問われているのではないでしょうか。
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