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執筆者の写真吉田正幸

経営情報の見える化が公定価格の在り方を左右する?!

 

定員超過でも定員割れでも実員に応じた給付へ?


 財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会が11月13日に開かれ、社会保障の在り方をめぐって論議した中で、「少子化対策・子育て支援」も取り上げられました。

 「少子化対策・子育て支援」については、その現状や課題などに関するデータが示され、今後の改革の方向性(案)として次のようなことが提示されました。

◇保育の公定価格の在り方

 予算執行調査では、収支差率の高さや恒常的に定員を超過している施設への対応が提言されており、適切に反映していくべき。また、今後、経営情報や職員の処遇について継続的に把握し、必要な見直しは5年に1度の改定年を待つことなく、機動的に実施すべき。

◇保育の受け皿整備

 今後も児童数の減少が見込まれるとともに、人手不足が深刻化する中で、これまでの受け皿増を優先する政策を転換し、地域ごとのニーズに応じた保育提供体制の在り方について検討していく必要。

◇少子化対策におけるEBPMの強化

 今般取りまとめられた「少子化対策のKPI(素案)」について、経済財政諮問会議や行政事業レビューの枠組みとの連携の下、政策の実施状況を踏まえ、随時、見直しを図るとともに、これらを活用して効果検証を行い、必要な見直しを不断に行っていくべき。

 このうち、保育の公定価格の在り方については、保育所等における継続的な経営情報の見える化が制度化され、令和7年度から毎事業年度の経営情報(収支計算書、職員給与の状況等)が明らかにされることから、これを反映しながら公定価格の見直しに取り組むことを求めています。

 また、収支差率の高さや恒常的に定員を超過している施設への対応に関しては、同じ実員でありながら、定員超過施設と定員割れ施設を比較すると、定員規模別単価の要素があるため、定員超過施設の収支差率のほうが高くなっているケースが確認されたとして、定員超過施設に対しては「実員に応じて機動的に減額調整を行うべき」との考えを示しています。

 このほか、収支差率については、施設類型の違いにかかわらず中小企業を上回る収支差率となっており、特に地域型保育事業の収支差率が突出して高いことが確認されたと指摘しています。これに関しては、「施設類型別の収支差率に開きがあることを踏まえ、公定価格の単価設定の水準を検証し、適正化すべき」として、特に収支差率が高い地域型保育事業については、「令和7年度の公定価格見直しへの反映を検討すべき」と提言しています。

 しかし、例えば家庭的保育のように最大でも5人しか子どもを受け入れられない事業もあり、その収支規模を考えれば、収支差率を中小企業と比較すること自体に無理があります。財務省の考えそうなことではありますが、これについても経営情報の見える化によって何らかの歯止めをかけることが期待されます。

 

*財政制度分科会の「少子化対策・子育て支援」に関しては、近日中に会員ページの「ニュース解説」で詳しく取り上げる予定です。

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