札幌市はこのほど、「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2023」を策定・公表しました。同プランは、今年度から2027年度までの5年間を計画期間とし、8つに分類したまちづくりの分野のトップに「子ども・若者」を挙げて、「安心して子どもを生み育てることができる、子育てに優しいまち」を目指すとしています。
同プランの大きな特徴は、各分野ごとに市民評価や具体的な成果指標を掲げて、その進捗状況を経年で把握・検証しながら、計画の着実な推進を図ろうとしていることです。
例えば「子ども・若者」分野でみると、次のような成果指標を掲げています。(それぞれ現状と2027年度の目標値)
○合計特殊出生率:1.08(2021 年度)⇒目標値1.30
○20~29 歳の道外への転出超過数(日本人のみ):2,135人(2022 年度)⇒950 人
○18 歳以下の子がいて、妊娠・出産や子育てについて相談相手や情報収集手段がある親の割合:86.4%(2022 年度)⇒92%
○希望に応じた保育サービスが利用できた保護者の割合:80.7%(2022 年度)⇒86%
○自分の目標をもって生活している子どもの割合:71.6%(2022 年度)⇒80%
また、アンケート調査に基づく市民評価については、まちづくりの基本目標の実現度合いを5段階評価で表しており、次のような目標を目指しています。
○ 安心して子どもを生み育てることができる、子育てに優しいまち
【市民評価:現状値2.95(2022 年度)→目標値3.30(2031 年度)】
○ 誰一人取り残されずに、子どもが伸び伸びと成長し、若者が希望をもって暮らすまち
【市民評価:現状値2.66(2022 年度)→目標値3.10(2031 年度)】
○ 一人一人の良さや可能性を大切にする教育を通して、子どもが健やかに育つまち
【市民評価:現状値2.96(2022 年度)→目標値3.30(2031 年度)】
こうした成果指標を掲げ、市民評価も行うという進捗状況の把握や評価を行うケースは、残念ながらどちらかと言えばレアケースです。
多くの自治体では、定量的な目標を掲げ、その達成度を評価するというものがほとんどです。
一例を挙げれば、市町村版次世代育成支援推進行動計画において、目標事業量の達成状況を「A:100%を超えている」「B+:90~100%で進捗」「B:70~90%で進捗」「C:+70%未満だが一定の成果を上げている」「C:70%未満であり、停滞している」といった判断基準に基づき、子育て相談が目標の8000件に対して8013件であれば100%を超えているので、評価はAということにする自治体が多いようです。
もちろん目標値を超えることは一面で望ましいことでしょうが、上記の子育て支援のような事業では、ただ件数が多ければいいということにはなりません。相談しやすい状況が生まれたというケースもあるでしょうが、一方で子育てに悩みを持つ保護者が増えたという可能性も否定できません。相談件数が増えたことをもって、相談支援体制が整備され悩みを解消できた保護者が増えたとは必ずしも言えないからです。
そう考えると、今回の札幌市の中期プランは、単なる定量的な目標値ではなく、市民評価という定性的な評価や具体的な成果指標を掲げて、進捗状況を検証しながら計画の着実な推進を図ろうとする点で、実効性が担保されていると言えそうです。
こうした取り組みは、政府を挙げて推進しようとしているEBPMの考え方とも合致します(EBPMについては、本ホームページのニュース解説に詳しく掲載)。
そのことを裏付けるように、同プランでは、「業務の見える化などの根拠に基づく政策立案」の一環として、「根拠ある目標設定及び事業の見直しの促進」を挙げており、その中で「EBPMの観点から、事業の企画立案時に客観的な根拠に基づく適切な指標設定を行うとともに、当該指標の達成度を客観的に評価し、事業の見直し・再構築を促進」することを謳っています。