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執筆者の写真吉田正幸

厚生労働白書が扱う最後の保育政策


 

 「つながり・支え合いのある地域共生社会」をメインテーマに掲げた令和5年版厚生労働白書がこのほど発表されました。白書は2部構成で、特集にあたる第1部はメインテーマである「つながり・支え合いのある地域共生社会」、第2部は「現下の政策課題への対応」として子ども・子育て支援政策や労働政策、年金・医療・介護、障害等の社会保障政策などを取り上げています。

 厚労省の子ども家庭局と内閣府の子ども・子育て本部を統合して、今年4月からこども家庭庁が発足したことから、厚生労働白書が子どもや子育て家庭、児童福祉、保育政策を扱うのは今回が最後となります。そこで、ここでは白書に書かれた保育政策をトピック的に見てみたいと思います。

 第1部では、第1節で「人口の変遷・縮小する世帯や家族」の状況について概説するとともに、福祉制度の沿革と現状に触れながら児童福祉の沿革や現状も取り上げています。その中で、児童福祉の沿革や現状についての小見出し的な説明を見るだけで、極めて簡略ながら戦後から今日に至るまでの児童福祉の歩み(言い換えると保育政策の歴史)を理解することができます。

 小見出しを具体的に列挙してみましょう。

◯戦後すぐの児童福祉は、戦災孤児などへの援護が最優先だった

◯昭和30年代以降、保育所の整備が進んでいった

◯1980年代以降、保育の質の向上や需要の多様化への対応が求められた *1

◯児童福祉施策は、1990年の1.57ショック以降、少子化対策としての色彩も帯びていく

ようになった

◯「次世代育成支援対策推進法」、「少子化社会対策基本法」の制定

◯社会保障の機能強化のため、社会保障・税一体改革の一項目として、消費税率の引上げによる増収分も活用して子ども・子育て支援新制度が創設・施行された

◯新制度での利用の仕組みは、保育の必要性と必要量を踏まえた利用決定などの点で、介護保険法や障害者総合支援法の仕組みに接近している

◯子ども・子育て支援新制度と地域づくりを結ぶ地域子ども・子育て支援事業

◯“こどもまんなか”こども家庭庁の創設

*1:ここで言う保育の質とは、今日言われているような保育そのものの質というよりも、多様な保育需要に対応していくための質的充実ということであり、例えば延長保育や夜間保育等の特別保育対策がそれに該当する。

 また、第1部の第3章「『つながり・支え合い』のある地域共生社会の実現を目指して」では、「制度・分野ごとの『縦割り』や『支え手』『受け手』という関係を超えて」「『つながり・支え合い』のある地域共生社会を実現する」ことの重要性を指摘しており、その実現に向けた方向性について触れています。

 この方向性を象徴する言葉として、次のようなものが挙げられています。これは、こども家庭政策や子ども・子育て支援でも大切なキーワードとなりそうです。

「包摂的(インクルーシブ)」「アウトリーチ」「居場所づくり」「伴走型支援」「対象者の属性を問わない相談支援」「参加支援」「社会資源の開発やネットワークの構築」

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