こども家庭庁が令和6年度経営実態調査の速報値を公表
こども家庭庁がこのほど、令和6年度経営実態調査の速報値(概要)をまとめたところ、保育事業等の収益から人件費等の支出を差し引いた収支差の割合である「収支差率」について、保育所だけが上がって、それ以外の幼稚園、認定こども園、地域型保育事業は平成30年度の前回調査より減少していることが分かりました。
また、収支状況のうち、収益に占める人件費の割合である人件費比率をみると、保育所だけ下がっており、他の施設・事業者は上がっていました。給与月額自体は、保育所、幼稚園、認定こども園いずれも33~34万円で、前回調査に比べて4、5万円程度上がっていました。
さらに、私立の施設・事業所の職員配置状況に関して、公定価格の配置基準と実際の配置の違いをみると、保育所(保育士)が、4.1人、幼稚園(新制度、教諭)が2.2人、認定こども園(保育教諭)が5.5人と、いずれも基準より実際の配置のほうが多くなっていました。4・5歳児の職員配置基準の改善が図られることになりましたが、今回の実態を見ると、なお一層の改善が必要だと言えそうです。
保育所だけ収支差率が上がり、人件費比率が下がっている原因は不明ですが、多少なりとも影響を与えている要因としては、以下のものが考えられそうです。
○1人当たり給与月額:保育所(保育士)は前回調査より4.6万円増、幼稚園(新制度、教諭)は4.8万円増、認定こども園(保育教諭)は5.2万円増となっており、平均経験園数も保育所が前回調査と同じ11.2年、幼稚園が1.4年高い9.2年、認定こども園が1.6年高い9.8年となっている。
つまり、相対的に保育所の給与月額の上がり方が緩く、平均経験年数も上がっていないことにより、人件費負担に違いを生じた。
○私立施設の利用定員・児童数:私立保育所の平均利用定員は90.2人、平均児童数は89.9人で両者の差は極めて小さい一方、幼稚園は平均利用定員は119.6人、平均児童数は109.8人、認定こども園は平均利用定員は148.6人、平均児童数は140.1人となっており、保育所のほうが利用定員と実員との差が小さく、公定価格上有利であった。
なお、抽出調査による経営実態調査は今回で終わり、来年度からは経営情報の継続的な見える化が行われるため、すべての給付を受けている施設・事業者がシステムを拡充した「ここdeサーチ」に経営データを届出・報告することが義務化されます。根拠のあるデータを分析・見える化することによって、さらなる処遇改善や職員配置の改善につなげていくことが期待されます。