韓国と並んで激しい受験競争で知られる中国では、時として“幼稚園の小学校化”とも言われる幼稚園(幼児園)の早期準備教育が相変わらず続いているようです。もちろん、都市部と農村部という違い、あるいは富裕層と貧困層という違いによっても異なりますが、幼児期から英語や算数、各種習い事を教えることが珍しくなく、小学校を念頭に置いた準備教育が一般化しています。
そのことを裏付けるように、8月29日付の日本経済新聞によると、中国の全国人民代表大会常務委員会は、幼稚園入園時のテスト選抜や小学校のカリキュラムを教えることを禁止するなど、就学前の幼児教育に関する法案の審議を始めたそうです。
幼児教育の早期準備教育化は今に始まったことではなく、中国の教育部(教育省)は以前から“幼稚園の小学校化”に対する規制を強化する動きを示していたと言います。例えば、「幼稚園が小学校の授業で学ぶはずの漢字の読み書きや算数、英語などの内容を教えることを禁じる」「幼稚園が小学校で学ぶはずの内容を宿題として課すことや小学校レベルのテストを実施することを禁じる」といった具合です。
また、中国の幼児教育が抱えている問題は、単に“幼稚園の小学校化”にとどまらず、守旧的な社会主義から社会主義市場経済へ転換する流れの中で、国立・公営中心の施設が縮小すると同時に企業立も含む私立が次第に増えていき、現在では個人経営や株式立、外資系などの幼稚園も誕生しています。幼稚園や保育園、認定こども園などの設計を多く手がけている日本の有名な建築設計事務所が、中国に進出していることはよく知られている話です。
これら私立の台頭が、単なる小学校化だけでなく、モンテッソーリ教育やプロジェクト保育を採り入れる園、レッジョ・エミリア式の園など、多様化を進める要因になっていると考えられます。それに加えて、特色ある私立への人気が、保育料等の高コスト化につながっており、それも批判を浴びる要因になっていると言えそうです。
中国政府は現在、幼児教育を小学校教育の準備段階ではなく、学校教育体系の重要な構成要素であり基礎段階であるという考えに立って、幼児教育の量的拡大と質の向上を目指しています。これは、多くのOECD加盟国が目指す方向と変わりませんが、中国固有の事情が“幼稚園の小学校化”からの脱却を難しくしているようです。