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執筆者の写真吉田正幸

こども誰でも通園制度に向けた試行的事業の実施自治体は…


 
予算上は150市区町村だが、手を挙げたのは108自治体にとどまる

 こども家庭庁はこのほど、こども誰でも通園制度の本格実施を見据えた試行的事業に取り組む実施自治体を公表しました。同事業は、今年度補正予算に盛り込まれており、令和6年度を待たず取り組むこととしていますが、予算上は150自治体を想定しているものの、1月17日現在では108自治体にとどまっています。

 試行的事業は、補助基準上1人当たり月10時間を上限としていることや、補助単価が1人1時間当たり850円である(これに加えて保護者負担は1人1時間当たり300円程度を標準とする)ことなど、保育現場が期待するような運営水準にはありません。そのため、自治体が試行的事業に取り組もうとしても、事業を実施する施設・事業者が思うように集まらず、手を挙げるに至らなかった自治体もありそうです。

 施設数の多い東京では、港区、中野区、杉並区、多摩市の5区市しか手を挙げておらず、富山県や島根県、徳島県、宮崎県、鹿児島県などはゼロとなっています。東京都の場合、こども家庭庁が令和5年度事業として実施している「保育所の空き定員等を活⽤した未就園児の定期的な預かりモデル事業」とほぼ同様の事業である「多様な他者との関わりの機会の創出事業」を実施している自治体も多く、都事業のほうが補助率も高く、柔軟に取り組めることから、制約の多い試行的事業より都事業を選択したところが多かったのではないかと見られています。

 最終的に手を挙げる市区町村が150に達するかどうか分かりませんが、試行的事業における子ども1人当たり単価や利用時間の上限がネックになっているとすれば、これを改善しない限り円滑な本格実施は期待できません。試行的事業の取組状況を踏まえながら、本格実施の在り方を柔軟に見直す必要がありそうです。



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