保育者の抜本的な処遇改善など補正予算の中身が明らかに
子ども家庭庁はこのほど、令和6年度補正予算案の概要を公表しました。それによると、「保育士等の処遇の抜本的な改善」に1150億円を盛り込んだのをはじめ、保育所等の施設整備、保育分野のデジタル化の推進など、総額4335億円の補正予算案を計上しています。これは、令和5年度の補正予算1895億円の2倍以上の規模となります。
やはり注目されるのは、補正予算案全体の4割近くに及ぶ「保育士等の処遇の抜本的な改善」(1150億円)です。今夏の人事院勧告を踏まえたもので、これにより保育士等の処遇改善が過去最高の10.7%という人件費増加率となります。加算ではなく基本分単価に反映されるため、保育士等の実質的な給与アップ(本俸ベース)につながると考えられます。
また、「保育の提供体制の確保」に840億円が計上され、保育所等の施設整備に充てる就学前教育・保育施設整備交付金が大幅に増額されます。今年度当初予算では、この5年間で最も少ない245億円しか計上されておらず、それまで数次にわたって行われた園舎建替等の申請受付が第1次で終わるなど、建て替えを迫られる保育現場の危機感を高めていました。それが今回の補正予算により、この5年間で最も多い総額1074億円となります。
ちなみに、令和元年度は当初予算が747億円、補正予算が149億円で合計896億円でしたが、その後は令和2年度が697億円と158億円の合計855億円、3年度が497億円と430億円で計927億円、4年度が417億円と357億円で計774億円、5年度が297億円と318億円で計615億円と推移しており、令和3年度を除いて減少傾向にありました。
また、「過疎地域における保育機能の確保・強化」に2.9億円を計上しています。この事業は、来年度概算要求にも盛り込まれていますが、少子化が加速しているなかにあって、前倒し的に取り組みを進めるものと考えられます。来年度概算要求では、「過疎地域の保育所は、地域で唯一の子育て支援の拠点でもあり、その保育所が運営困難に陥ると、こどもを預けて働く場やこどもが集まる場所がなくなり、地域そのものの維持が難しくなる」との問題意識に基づいて、「地域の人々も交えた様々な取組(国基準以下の子育て支援事業や当該施設の独自事業等)にかかる具体的な取組内容や運用上の工夫、財政面も含めた運営上の課題など、今後の保育所の多機能化に向けた効果等を検証し、地域における保育機能の確保・強化を図るためのモデルを構築する」ことを目指すとしています。
このほか、「保育分野のデジタル化の推進」に81億円が計上され、ICT化や保育業務ワンスオンリー・保活ワンストップの推進など、保育DXの推進にさらに力を入れていくことになります。
今回の補正予算案のうち、保育関連である「多様で質の高い保育の持続的な確保」には、2117億円が計上されており、その内訳は以下の通りです。
(1)保育士等の処遇の抜本的な改善1,150億円
(2)利用者の保育所等の選択に資する情報提供の充実1.5億円
(3)「はじめの100か月の育ちビジョン」の推進1.4億円
(4)保育の提供体制の確保840億円
(5)過疎地域における保育機能の確保・強化2.9億円
(6)保育分野のデジタル化の推進81億円