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執筆者の写真吉田正幸

こども家庭庁の令和5年度補正予算案の注目施策


 

試行的事業の年度内実施は可能か?


 令和5年度補正予算案が今国会に提出されていますが、こども家庭庁も総額1895億円に上る補正予算案を計上しています。

 このうち注目されるのは、「こども誰でも通園制度」関係の予算です。まず「こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施に向けた試行的事業」として91億円を計上し、制度の本格実施を見据えた試行的事業について、2023年度中の開始も可能となるよう支援を行うこととしています。補正予算案が成立するのは、12月に入ってからになるのではないかと見る向きもあり、その後は来年度予算案の編成作業もあることから、試行的事業の早期実施を希望する自治体があったとしても、年度内に事業を開始するのは実質的に困難だと思われます。

 関連では、「こども誰でも通園制度の創設に向けたシステム構築」に25億円を計上し、制度の創設に向けて、こども家庭庁においてシステム基盤を整備し、各地方公共団体・施設・利用者が利用できるようにすることを目指します。これにより、制度の円滑な利用やコスト・運用の効率化を図るとしています。

 一方、保育所や認定こども園、幼稚園等に従事する職員について、令和5年人事院勧告に伴う国家公務員の給与改定の内容に準じた処遇改善を行うため、「保育士等の処遇改善(特別会計)」として620億円を計上しています。今回の人勧による処遇改善は、子ども・子育て支援制度が施行されてから最も大きな引き上げになると見られており、今年度の補正予算だけで620億円に上る費用を計上していることからも、引き上げ幅の大きさがうかがえます。

 また、DX化やシステム化、ICT化に向けた事業も積極的に進める姿勢が鮮明になっており、上述した「こども誰でも通園制度の創設に向けたシステム構築」だけでなく、「保育・幼児教育分野における継続的な見える化の促進」にも5億円を充て、福祉医療機構の「子ども・子育て支援情報公表システム」(ここdeサーチ)を改修し、保育所等を運営する施設・事業者の経営情報を収集し、集計・分析の結果を公表できるようにすることを目指します。

 さらに、「保育所等におけるICT化推進等事業」に29億円を計上し、保育士の業務負担軽減に向けて、登降園管理や保護者との連絡等に加え、実費徴収等のキャッシュレス決済等のためのシステム導入等を支援することとしています。さらに、保育所等におけるICT化を推進するため、地方自治体において、ICT事業者や保育事業者などで構成される協議会を設置し、域内保育所のシステム導入促進のための取り組みを行っている場合に補助率の嵩上げ(1/2→2/3)を行います。

 ほかにも、「放課後児童クラブ等におけるICT化推進事業」8億円や「こども政策DXの実現に向けた実証事業」10億円など、各種手続や事務処理等のデジタル化・ICT化や生成AIの利用等の取り組みを推進する予定です。


*補正予算に計上された「こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施に向けた試行的事業」の詳細と解説については、会員ページの「ニュース解説」に掲載しています。

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