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執筆者の写真吉田正幸

「こども・子育て政策はどこに向かうのか~少子化対策のたたき台まとまる」

 政府の「こども政策の強化に関する関係府省会議」が、少子化対策のたたき台となる試案をとりまとめました。若年人口が急減する2030年が少子化対策の分水嶺だとの認識に立って、今後3年間で加速化して取り組むこども・子育て政策を中心に、子育てに係る経済的支援や保育サービス等の拡充、共働きへの支援など、幅広い政策を打ち出しています。


 ただ、たたき台では、児童手当の拡充に象徴される経済的支援の強化が中心的な政策に位置づけられており、少子化対策としての実効性がどこまであるのか、明確な考えは示されていません。加えて、経済的な支援の裏付けとなる財源の確保についても、6月にも予定される政府の「骨太の方針」でどのように取り扱われるのか、依然として不透明な状況にあります。


 

少子化対策として「こども・子育て支援加速化プラン」打ち出す~気になる「こども誰でも通園制度の創設」~


 政府の「こども政策の強化に関する関係府省会議」が3月31日、「こども・子育て政策の強化について~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」と題する試案を発表しました。


 同会議は、岸田首相の指示を受けて、小倉こども政策担当大臣を座長に関係府省の局長級幹部で構成されたもので、これまで6回の会議を開き、学識経験者や子育て当事者などからのヒアリングも行いながら、今後3年間で加速化して取り組むこども・子育て政策と、こども・子育て政策が目指す将来像を取りまとめました。


 試案の中心となる「今後3年間で加速化して取り組むこども・子育て政策」については、今後3年間を集中取組期間として取り組む「こども・子育て支援加速化プラン」を打ち出しています。その中でも、児童手当の拡充に代表される現金給付などの経済的支援の強化が強く打ち出されており、6月にまとめられる予定の「骨太の方針2023」でどのような財源確保策が示されるか注目される。


 同プランは、①ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化、②全てのこども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充、③共働き・共育ての推進、④こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革──という4つの柱を掲げ、「今後3年間の集中取組期間における実施状況や取組の効果等を検証しつつ、施策の適切な見直しを行い、PDCA を推進していく」としています。


 このうち、ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化では、児童手当の拡充や出産等の経済的負担の軽減、こども医療費助成など医療費等の負担軽減、奨学金制度の充実など高等教育費の負担軽減などを挙げています。


 また、全てのこども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充では、幼児教育・保育の質の向上を図るため、「職員配置基準と更なる処遇改善」を行うことや、「全ての子育て家庭を対象とした保育の拡充」を図ることなどを挙げています。


 職員配置基準については、「1歳児は6対1から5対1へ、4・5歳児は30 対1から 25 対1へと改善する」としています。処遇については、「民間給与動向等を踏まえた保育士等の更なる処遇改善を検討する」との表現にとどまっています。


 さらに、注目されるのは、「全ての子育て家庭を対象とした保育の拡充」として、「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設を明記していることです。この「こども誰でも通園制度」というのは

、孤立した育児に陥りがちな未就園児家庭を支えるために、「就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付の創設を検討する」というものです。 


 「当面は、未就園児のモデル事業の拡充を行いつつ、基盤整備を進める」としており、今年度の新規事業である「保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業」をベースとしながら、将来的に保護者の就労要件を問わない「こども誰でも通園制度」の創設を目指すことになります。

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