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執筆者の写真吉田正幸

10年後の子ども・子育て支援の方向性とは?


 

先駆的な取組事例から見えてくる近未来の「地域づくり×保育機能」


 株式会社日本総合研究所はこのほど、「こども・子育て支援の今後に関する先進的な取組事例の収集・検討に関する調査研究」報告書をとりまとめました。そこでは、多様な保育機能を地域づくりという視点から捉え直し、子ども・子育て分野における今後の取組の方向性を示唆しています。

 同事業は、こども家庭庁の令和5年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業の一環として実施されたもので、この調査研究では先駆的な取組の実践者や学識経験者等で構成する「10年後の子ども・子育て支援の在り方を考える研究会」を中心に、先駆的な取組を行っている事例を6件抽出し、実際にヒアリングを行った上で今後の在り方を検討しています。

 報告書によると、目指す視点を「こどものウェルビーイング」に置いた上で、それを「保育者・保護者・地域・社会」が支えていく形を実現するというイメージに立って、今後の子ども・子育て支援の在り方やビジョンを考察し、「地域づくり×保育機能」という視点から今後検討されるべき10の方向性を提案しています。

 そこで示された10の方向性とは、次のようなものです。

①    育ちの保障及び機会の提供/保育の質の確保

②    こども・保育者の主体性を尊重できる環境の提供

③    インクルーシブな環境の提供

④    地域におけるソーシャルワーク機能の実装

⑤    産前の妊婦や卒園後のこどもとの継続的な関係構築

⑥    安心安全な環境の提供

⑦    保護者の働き方改革への寄与/保護者の地域参画

⑧    高齢者支援/就業支援/商業/教育等との連携強化

⑨    地域文化の維持/創出

⑩    こども・働き手視点の移住定住促進/こどもも保育者も選択できる制度の構築

 これらの方向性を実現するためには、「保育関連事業者・自治体・地域それぞれが協力しながら検討を進める必要がある」と同時に、地域に開かれた子育てに取り組んでいく必要性を説いています。

 また、異分野との連携も欠かせないことから、「国における横串機能強化と共に自治体において仕組みとして横串検討がなされるよう、自治体上位計画検討プロセス(総合計画、地域福祉計画、こども計画 等)において、こども・子育て分野と異分野との連携を促す仕組みの構築等も重要となる」との考えを示しています。

 さらに、こうした方向性を目指していく中で、「保育所等が地域づくりにおいて担う機能に変化が生じるため、『保育機能』の社会的な位置付けが代わることが期待」されるとしています。これは、「こども誰でも通園制度」に象徴されるように、保護者の就労の有無や家庭の状況にかかわりなく、ユニバーサルな保育が求められていくようになれば、「保育」の多義性や再定義が求められる可能性に言及したものです。

 なお、報告書には、先駆的事例としてヒアリングした6か所に研究会メンバーの施設・事業4か所を加えた計10か所を事例集として掲載し、保育機能と地域づくりのシナジーや好循環形成に向けた仮説を整理しています。

 

*事例集を含む「こども・子育て支援の今後に関する先進的な取組事例の収集・検討に関する調査研究」報告書(全文)は、会員ページの「情報データベース」にある「報告書・答申」にアップしています。

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