保育システム研究所

The research institute for system on childcare and early childhood education.

トピック

2013年04月08日(月)

新制度と私立幼稚園

 民主・自民・公明3党の修正協議による子ども・子育て関連3法が国会で成立し、8月22日に公布された。これを踏まえて、国では関係政省令の制定・改正や必要な指針・基準の策定、子ども・子育て会議の設置など、様々な実施体制の整備に着手することになる。
 また、地方自治体においては、基礎自治体である市町村を中心に、市町村・都道府県事業計画の策定や地方版子ども・子育て会議の設置、関係条例の制定・改正などの作業に取り組むことになる。
 幼稚園、保育所、認定こども園といった保育現場では、こうした国や地方自治体の動きをにらみながら、新制度における自園の方向性や今後のあり方を考えていく必要がある。
 そこで、本稿では、私立幼稚園として新制度をどう受け止め、どう対応すべきかについて、子ども・子育て関連3法に則した情報を提供しておきたい。
〔幼稚園から見た新制度のポイント〕
 まず新制度において、私立幼稚園の選択肢は大きく3つある。現行の都道府県所管の私立幼稚園として残るか、新たに市町村所管の私立幼稚園に移るか、認定こども園に移行するかの3つである。
 以下にそれぞれの違いや特徴を示してみる。
〈現行の私立幼稚園〉
 都道府県の所管であり、学校法人立の幼稚園に対しては経常費補助、学校法人以外には一般に経常費補助より金額は少ないが何らかの補助がなされている。保護者には就園奨励費補助が行われている。
 また、保育料は各園が自由に定めており(自由価格)、利用者からの入園申込みに対して必ず受け入れなければならないという応諾義務は課されていない。
〈市町村所管の私立幼稚園〉
 新しい制度では、市町村に手を挙げるだけで市町村所管に移ることができる。市町村所管になれば、幼稚園そのものは何も変わらないが、経常費補助や就園奨励費補助がなくなる代わりに、「施設型給付」という新たな公費を受けることになる。
 施設型給付は、理屈の上では利用者に給付するものだが、実際には法定代理受領という仕組みで施設に給付される。考え方としては、市町村が利用者に保障した個人給付(幼稚園利用者は市町村から支給認定を受ける)を、利用者が保育という現物給付を受けるのと交換する形で施設に給付が移る。それに対して市町村から施設型給付が行われる。
 また、保育料は市町村が利用者の所得に応じて応能負担で定める(公定価格)ほか、利用者からの入園申込みに対して正当な理由がない限り必ず受け入れなければならないという応諾義務を負う。
〈認定こども園〉
 幼稚園の場合は、幼稚園型認定こども園か新幼保連携型認定こども園に移行することが考えられる。
 今回の認定こども園法の改正では、新幼保連携型を創設する一方、幼稚園型、保育所型、地方裁量型の基本的な仕組みは現行と変わっていない。ただ、公費投入の仕組みが施設型給付に変わるため、幼稚園型、保育所型、地方裁量型のいずれであっても現行より確実に公費が担保される。
 具体的には、現行の保育所入所要件である「保育に欠ける」を「保育を必要とする」に変更し、国の基準に基づいて市町村が保育の必要性を認定する「保育認定」という仕組みを導入する。保育認定は、主としてフルタイム就労に対応した長時間、主としてパートタイム就労に対応した短時間という2区分になる。
 利用者は市町村に保育の必要性の認定を申請し、就労状況等に応じて保育認定を受ける。市町村は2区分のいずれかの保育認定を行い、利用者に認定証を交付する。認定証を交付された利用者は、保育所または認定こども園を選択することになるが、施設側は認定を受けた利用者(子ども)に保育を行えば、利用者に保障されていた個人給付を法定代理受領して施設型給付を受ける。
 その際、保育所だけでなく認定こども園の保育所機能も法定代理受領の対象となるため、認可保育所を持たない幼稚園型、地方裁量型も施設型給付を受けることができる。現行制度では、幼稚園型の保育所機能部分、保育所型の幼稚園機能部分に対して、安心こども基金から事業費を出せることになっているが、それを出さない自治体が少なくない上に、事業費は通常の運営費や経常費補助の75%という上限がある。こうした現行制度に比べると、施設型給付はもっと安定的な公費となる可能性が高い。
 一方、新幼保連携型は、現行の幼保連携型のように認可幼稚園と認可保育所の組み合わせではなく、新幼保連携型の認可基準を満たした新たな単一の認可とする。公費も施設型給付で一本化し、保育所機能部分の利用については保育認定による2区分の施設型給付、幼稚園機能部分については市町村から支給認定を受けた施設型給付がそれぞれ法定代理受領として給付される。
 なお、新幼保連携型は、学校教育施設であると同時に児童福祉施設でもある単一の認可となるため、職員には幼稚園教員免許と保育士資格を併有した保育教諭を置かなければならない。
〔幼稚園にとっての課題〕
 新制度において、私立幼稚園の所管は都道府県か市町村か、言い換えると私学助成を選ぶか施設型給付を選ぶか、いずれかを選択することになる。当面、各園が受け取る公費に大きな差は出ないと考えられるが、保育料が自由価格か公定価格かという違いが生じる。仮に両者の保護者負担が同じだったとしても、自由価格の場合は就園奨励費補助が後から支給され、公定価格の場合は所得に応じて最初から保育料が減免される。保護者から見れば、年間総額は同じでも毎月支払う保育料が異なる(公定価格のほうが低い)。
 また、認定こども園に移行する場合、供給過剰でない限り、幼稚園型、新幼保連携型それぞれの認定基準さえ満たせば、認定を受けることが現行制度より容易になると考えられる。認定こども園になれば、保育所機能部分に施設型給付を受けることができ、経営的には今以上に安定することが可能になる。
 制度の詳細設計はこれから行われるため、現時点ではっきりしたことは言えないが、現行の都道府県所管にとどまるのか、市町村所管に移るのか、さらには認定こども園に移行するのか。それぞれのメリット、デメリットを勘案しながら、各園が明確な将来ビジョンを持って、自ら選択、判断する必要がある。